重戸

 八犬伝の奇跡重戸。婿を入れるわ父の激昂も鎮めるわ、割と積極的で自立した女性像が窺える。しかも人に言うことを聞かせるのに長けているよう。というわけで、いつも穏和な賢妻だが如才なさが垣間見える強い女性として描くことにする。八犬女(伏姫・濱路・沼藺・雛衣・音音・曳手・単節・重戸)の中でも唯一悲惨な運命の外にあるという点も高ポイント。
 なお、オモトとはユリ科の常緑多年草のことで、万年青、老母草とも書く。オモトの音は御許(女性や女房を親しんで呼ぶ言葉、第二人称)、母刀自(母の尊敬語)にも繋がる。落ち着いた大人の女性としての役割を与えられていると言えるだろう。
 賢母重戸は即ち伏姫の姿にも重ねることができる。出自の高貴さは少し劣るが、彼女も立派に第二の伏姫と言えるかもしれない。穂北一党は彼女の加護があってこそ活躍できると言ってもいいだろう。実は八犬伝作中最強だったりして。

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