山林房八

 顔は信乃似の超絶美形だが、おそらく顔だけ。小文吾と張り合う相撲取りなので体格はがっしりしているし、商売人なのでどちらかというと愛想は良い方か。
 祖父である杣木朴平が那古七郎を殺したばかりに自身も討たれなければならなくなったという、世代を超越した因果応報論を見事に体現した人。だが丶大や濱路のように受動的な運命ではなく、むしろ積極的に自己犠牲に向かっているあたりが房八の房八たる所以である。自分を小文吾に殺してもらおうというのもちょっと無理があるし。
 「栗本薫の里見八犬伝」を読んだ。ここでは房八の自己犠牲を簡潔にまとめている。即ち、犬士たちと対等でありたかったのである。憧れの義兄が里見に仕える運命にある勇士であると知った。自分もそれに準じたい。しかし自分には霊玉も牡丹の痣もない。ならば陰ながらでも構わぬから義兄の手助けをしたい――そのような思いの結果だという。これが一番しっくりと思うが、どうだろうか。
 それにしても、房八と信乃を取り替えて濱路と沼藺に対面させてみたい。

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